任意売却と自己破産
「任意売却をするか、自己破産をするかで迷っている」「任意売却をすれば自己破産はしなくてよいか」という相談があります。
「いまの収入では住宅ローンの返済は不可能です。家を売却できることならならしたいですが、売却すると残りのローンを一括返済しなければならないと聞きました。自己破産しなくてもよい方法はありませんか。」という相談です。
結論をいうと、任意売却と自己破産は直接の関係がありません。
自己破産は、法的債務整理の一つで「債務の支払いが不能」であることが要件になります。対して任意売却は、担保権者の承認をえて物件を売るだけで他に制約はありません。
自己破産をすると原則として所有資産は処分されますが、免責を受ければ債務の返済の請求はなくなります。
これに対して、任意売却では売却代金はローンの返済に充てられますが、それでもローンが残れば請求は避けられません。
自己破産と任意売却のこの違いは、決定的に重要です。にもかかわらず、両者を同じように考える人は少なくないのです。
「任意売却で残債はなくなるとか、放っておけば請求はこなくなる」などという無責任な業者の話を聞いて、両者を同じように理解してしまうのでしょう。
任意売却後の残債についての相談事例です。
「一年前にマンションを任意売却しました。売却しても残債が残るので迷っていたのですが、仲介業者に後から送ってくる書類に支払いない旨を書いて提出すれば大丈夫といわれ、売却を決めました。その後債権者からは何の連絡もなく、それで済んだだのかと思っていました。ところが先日、返済をお願いしたいので相談をお待ちしていますとの文書が届きました。現在、求職中で収入はなく、家族には度々のローン滞納や売却時に迷惑をかけており、どうしたらよいかと悩んでいます」(池田市)
「支払いが困難になり任意売却の専門不動産業者に売却を依頼しましたが、業者は残債の支払いは、来たらきたで対処しましょう、という感じでした。今年に入ると債権回収会社の担当者から外での面談を求められ、会社の帰りに喫茶店で債務弁済の説明を受けましたが、とても嫌な雰囲気で払わないとどうなるとか脅かされているようでした。正直会いたくないのです。自分のことだから誠意で解決してください、と業者にはいわれますが精神的に不安です」(豊中市)
「2年前の任意売却ですが、残債を譲り受けた債権回収会社から生活状況を聞きたい、という電話がきますがどうしたらよいでしょうか。途方に暮れています。任意売却した業者は、放っておけばよい、残債は時効でなくなってしまう。というのですが本当でしょうか」(尼崎市)
売却すれば残債務はなくなると、いわれるままに売却した後で請求がきて戸惑っている人は少なくありません。しかし当然ですが、多額の債権を放棄するような債権者などいるはずがないのです。
どうしても残債の請求から逃れたいのであれば、自己破産を選択せざるをえません。破産はしたくない、何かうまい手立てはないか、と任意売却のページを渡り歩いても方法は見つかることはないのです。
任意売却をすれば、自己破産の手続費用が安くなるだけでなく、債権者との話合いで生活に支障をきたさない残債の返済計画も立てられますから、自己破産を避けられる場合があるのです。
自己破産か任意売却かの二者択一で考えるのではなく、両者のメリットとデメリットを総合的に考えた対応が望まれます。
自己破産や任意売却でお困りの方は、是非一度当社にご相談ください。